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七月五日 二番街
「ほら。もう帰るぞ」
「勤務明けなんだし、もう少しいいじゃないですかー」
バーを出て帰ろうと言う男に、女はビール瓶を煽って見せた。
「リーフさんみたいな良い先輩に恵まれて、私は本当に嬉しいです!」
「わかった、わかった。初勤務お疲れ様」
バーテンダーに目配せした男はカウンターに金を置くと、女の背中をあやすように叩きながら店を出た。
リーフはスコップランド警察に勤める刑事だった。主に殺人事件を扱う刑事三課。そこに今日配属されて来たのが、酒で饒舌になったバニラだった。
「今日は、ありがとうございました」
店を出ると長い髪を手櫛で整えたバニラは、背筋を伸ばし綺麗なお辞儀をリーフに向けた。
「酔ってないのか?」
店内から一変したバニラの態度に驚いたリーフは、グレーの瞳でバニラの顔色を見定めた。
「はい。全然」
「こいつは驚いた」
声を上げて笑ったリーフは、バニラの後ろからライトを点けずに走ってくる車に気がついた。一瞬身を固めたリーフだったが、車はそのまま二人の脇を通りすぎた。そして車が向かった先から悲鳴が聞こえ、リーフが振り向いた時にはバニラが駆け出していた。
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