七月五日 二番街

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「すみません警部。俺が居ながら」 「気にするな。お前達が居合わせたのが不幸中の幸いだ。誘拐なら時間勝負だからな」  上司である警部ウォーカーは、リーフの肩を軽く叩いた。  白みかけた空を集まった応援車輌のパトランプが染めていた。リーフとバニラの脇を抜けた車が、歩いていた女性を拉致し走り去ったのだ。 「警部。お、お疲れ様です。逃走車の手配を。その、しておきました。あ、盗難車だった、みたいで」  競走馬の美しい尾のように髪を束ね、声が小さく自信なさげなバニラに、リーフとウォーカーは苦笑いを浮かべた。 「車の形状からナンバーまでバッチリだったじゃないかバニラ。もっと自信持てよ」  現場でのバニラは声も態度も小さい。自分から発言はするものの、どこか遠慮がちに話すのだ。 「ご苦労様バニラ。で、女性は?」  サスペンダーが服の柄に見えるほどフィットした体をバニラに向け労ったウォーカーは、リーフに真顔を向けた。 「はい。落ちていたバッグに、イザベラ・テイラーの学生証が」 「その名前。まさか紳士服メーカーの?」 「はい。社長ゴードン・テイラーの娘かと」 「もう顔見知りの線は薄いか。お前はイザベラの家に。バニラは私と一緒に、おっと二人とも明けだったな」  身振りで指示を出していたウォーカーは、二人が休みだったことに気が付き頭に手を当てた。 
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