(元同級生に不本意にも)なぐさめられる

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(元同級生に不本意にも)なぐさめられる

「千聖ちゃん、差し入れ」  デスクで書類整理をしていると、ファイルの上にコンビニの袋が置かれた。小瓶と小さな箱。瓶の方は栄養ドリンクだろうが、箱は……。 「俺、千聖ちゃんの色のファンデ持ってないからさ。今日のところはってことで」  何を言われているのかわからなかったが、出てきた絆創膏と首を指す新山で理解した。 (首すじのキスマークを隠せ、と)  新山が普段ファンデーションを使って隠していたなんて知りたくもなかったが、これからクライアントと会うことを考えればありがたく受け取っておくべきなんだろうとは思う。複雑な気分だ。 「間に合わなかったみたいだね」  そのひと言で思い出した。こいつの意味深な言葉は、忠告だったのか。ならもう少しわかりやすく言え。 「奥さんの方もなかなかだったけど、彼は彼で食わせ者だよね。で、誰だったの? 俺しかいないだろうから相談のるけど」 「最後のは余計だ」  だが元依頼人の男に襲われて云々の話ができるのは、確かに新山以外いなかった。クライアントのことは話せないし、千聖には男同士の関係を話せる友人もいない。思わず漏れる溜め息。 「……元カノの弟だった」 「そっちか」  新山は新山である程度察しをつけていたらしかった。だからその情報をもっと早く、とは思っても、これは気づかなかった自分の失態だ。 「一目惚れだったんだと。でも姉の彼氏ってことで諦めて自分も彼女つくったら、すぐ結婚って言われて、それがこないだの奥さんだったらしい」  絶妙に罪悪感を覚える。なんでこんな可哀相な目に、と思えば、たどっていけば自分のせいだったという皮肉。『避妊した、それもたった一回でできるものかなとは思ったけど、結婚すれば千聖さんを忘れられるかなと思って』なんて言われてしまった。 「わーお。いらないサプライズっていうか、すべての元凶チック」 「あいつとおんなじこと言うなよ……」  『失恋してヤケになってつくった彼女とこんなことになって途方に暮れてたら、駆け込んだ先に千聖さんがいたんですよ。これ、運命ですよね』と目を輝かせてきた貴之を思い出す。子犬じゃない、コブラだ。じわじわ絡みついてきて、ガブリ。そして丸呑み。
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