(姉の元彼氏を)ひっこぬく

1/3

62人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

(姉の元彼氏を)ひっこぬく

 うーわ、この人、めっちゃタイプ。と思った瞬間、貴之は現実へ引き戻された。姉ちゃんの彼氏だって紹介されてるんだった。じゃあ無理だ、と諦める。  巷では姉弟で恋人の奪い合いも聞くが、貴之には縁遠い話だった。姉と好みがかぶったのは初めてだったものの、だからといって奪おうとは思わない。 (だって、姉弟で穴とか竿とかの姉弟になるって嫌だし)  妙に清潔感のある貞操観念を発揮して、貴之は結婚前提にと真剣交際してるらしい二人を邪魔することなく過ごしていた。ひと目で自分の心を奪った人を上塗りできる相手を探しながら。  それは徒労だった。そんな相手は見つかりそうになかった。途方に暮れ諦めたところへ告白され、貴之は付き合うことにした。交際を重ねれば、数で忘れられるかと思った。  しかしほどなくして、彼女から「妊娠したから結婚してほしい」と言われた。ゴムをつけた一回で? とは思ったものの、確率はゼロではない。そんなものかと籍を入れた。結婚すれば忘れられるかとも思ったし、姉が結婚するのなら、あの人は義理の兄になる。どうせ家族になるのなら、それでもいいかと思っていた。  そんな矢先、姉は別れた。貴之の心情は「何やってんだよバカ姉貴!」である。そして次に「僕が狙ってもいい」と思った。チャンスが回ってきたのだと。  だが貴之は既婚者になってしまっていた。どうにか別れられないかと考えて、以前から疑問に思っていた子どもと彼女について調べることにした。案の定、子どもは他人の子だった。時期が一致しないように感じていたのは正しかった。買い物やママ会と称して出て行く嫁も、探偵に依頼して調べてみれば不倫していただけだった。結婚以前から関係のあった人物もいて、子どもはおそらく彼との子だろうとのことだった。  調査結果をもとに問えばあっけらかんと答えた嫁に、貴之は離婚届を突きつけた。そこから、嫁の謎理論が始まった。  検索すれば確かに推定嫡出子というものもあり、何が正しいのかわからなくなってきた。そんなときに偶然通りかかった法律事務所で、貴之は運命の再会を果たした。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加