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「ここって、実在するんですか?」
この夢が醒める前に、どうしても聞きたかったこと。
それを口にできたのはよかったが、彼女の方は瞬きして不思議そうに僕のことを見つめている。その視線に少し焦る。
「いや、最近この夢をよく見るんです。ここで過ごす時間は本当に心地がいいもんだから、僕自身すごく好きな夢で……あんまりにも素敵なお店なんで、現実の世界でも行ってみたいなぁって……」
不安になって顔色を伺うと、向かいに座った彼女は明らかに困っていた。余計に焦った僕は、途端に早口になった。
「何回も調べてるんですよ? でも、なかなか見つけられないし……店名とか所在地とか、何かヒントになるようなものを教えていただければ……」
「一番テーブルさんに、たまごサンドお願いします!」
すると今度は、厨房の方から声が飛んできた。
彼女は慌てて返事をし、席を離れていく。
「今日こそは」と思っていたが、どうもタイミングがいけなかったらしい。そして、今日はこのまま目覚めてしまいそうな予感がした。
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