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「真依ちゃん?」
テーブルを拭いているとき、名前を呼ばれて手を止めた。振り返ると、目の前にいた若い女性が大きく笑っていた。
「やっぱりそうだ! 元気だった?」
女性は手を振りながらこちらに近付いてくる。なんだかすごく嬉しそう。けれども、私には全く見覚えのない人物だった。
体を固めていると、女性は早々に勘付いたらしく、また大きく笑い始めた。
「私だよ、私! 紗夜!」
そのひとことで、時が止まる。
「あぁー! えっ、さっちゃん?」
記憶に埋もれたあどけない顔の彼女と、目の前にいる彼女がスッと重なる。
「びっくりしたよ〜。おしゃれなお店あるなぁって思って入ったら……」
さっちゃんはバシバシと私の肩を叩く。ちょっと痛かったけど、痛さより嬉しさが勝った。
「実はさ、みんなもいるんだよ!」
「みんな……?」
「おおーい! みんな! ここ、真依ちゃんのお店だった〜!」
すると、さっちゃんの声を合図に、店内へ若い男性ふたりが入ってきた。
見覚えがない……
そう思われたがそれも一瞬で、あの日の顔といまの顔がどんどん一致し、私の心は一気にタイムスリップした。
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