それでも花は咲く

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2 「真依(まい)ちゃん?」  テーブルを拭いているとき、名前を呼ばれて手を止めた。振り返ると、目の前にいた若い女性が大きく笑っていた。 「やっぱりそうだ! 元気だった?」  女性は手を振りながらこちらに近付いてくる。なんだかすごく嬉しそう。けれども、私には全く見覚えのない人物だった。  体を固めていると、女性は早々に勘付いたらしく、また大きく笑い始めた。 「私だよ、私! 紗夜(さよ)!」  そのひとことで、時が止まる。 「あぁー! えっ、さっちゃん?」  記憶に埋もれたあどけない顔の彼女と、目の前にいる彼女がスッと重なる。 「びっくりしたよ〜。おしゃれなお店あるなぁって思って入ったら……」  さっちゃんはバシバシと私の肩を叩く。ちょっと痛かったけど、痛さより嬉しさが勝った。 「実はさ、みんなもいるんだよ!」 「みんな……?」 「おおーい! みんな! ここ、真依ちゃんのお店だった〜!」  すると、さっちゃんの声を合図に、店内へ若い男性ふたりが入ってきた。  見覚えがない……  そう思われたがそれも一瞬で、あの日の顔といまの顔がどんどん一致し、私の心は一気にタイムスリップした。
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