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目を開ければ、そこは真っ暗な世界だった。
――戻ってきたんだ――
確かにいつまでも幸せな時間が続くわけなんてない。そんなことはわかっていた。思っていたよりも冷静に事を受け止められている自分がいた。
それはきっと、きちんとした言葉で思いを伝えることが出来たからだろう。
「望みは叶ったか?」
「はい」
「そうか。なら、もう思い残すことはないな?」
老爺の問いかけに、頷こうとしたその瞬間――
「ちょっと待った!」
その動きを止める声が届いた。ここには、洸平と老爺しかいないと思っていたのに、第三者の存在があったことに驚きを隠せない。
「お前は、大東祐希だな」
「そうです。思い残すことあります」
自分の目の前に現れた人物に、思わず自分の目を疑った。何度見もしてしまう。そして、何度見てもそこにいるのは、祐希だ。
「ちょっ、なんで……」
「思い残すこと、あるでしょ?」
「そうじゃなくて……なんでここに……?」
「俺も一緒だよ。同じ日に同じ場所で死んだんだ」
「うそ……だろ……?」
「本当だよ。洸平に呼ばれた気がして……振り返ったらお前を見つけて、気づいたら走り出してた」
「そんなことって……」
「っとに、ばかだよな……」
信じ難い話に思考は止まったまま――。だけど、目の前の祐希は笑っていて――、可笑しくないこの現状に、ふっと笑いが出た。
「俺たちは、ずっと一緒にいるべきだ。だろ?」
「ああ……」
「それでは、二人の最後の願いは、ずっと永遠に寄り添うでいいんだな」
「「はい」」
「もう二度とその手を離すことのないように……」
「けど、どうしてですか?」
二人が疑問に思っていることはきっと同じはずだ。
最後の願いは、自分の気持ちを大切な人に伝えることだった。
そして、その願いは叶うことが出来て今ここにいる。
もうすでに最後の願いは使ったはずなのに――。
「二人でここにいるということは、二人で一つの最後の願いを叶えることができる」
「「じゃあ、俺たちは……」」
「生涯、共に過ごすと誓うか?」
「「はい」」
「その願い、叶えよう」
まるで二人を導くように、真っ直ぐな光の橋が現れて、その上を並んで歩いていく。
その先に何が待ち受けているのかはわからないけれど、きっと大丈夫。
二人ならどんなことでも乗り越えられるはずだから――。
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