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「祐希、ちょっと待って! ちゃんと話そう」
走り去る背中に向かって言葉を投げ掛けているのに、その背中は振り返ることのないまま遠くなっていく。追いかけるように駆け出すと、通りの向こうに見つけた祐希の姿に、一点だけを捉えたまま道路に飛び出した。
ビクッと全身が震え目を覚ますと、そこはまた真っ暗闇のあの空間だった――。
「思い出したか?」
「はい」
「では、もう一度聞く。お前の最後の願いは何だ?」
「俺の願いは、大切な人にちゃんと伝えたい。自分の気持ちをちゃんと……」
「よかろう。その願い叶える」
老爺がそう言って天に向かって手を伸ばした瞬間――眩しいくらいの光に包まれて体が宙に舞った――そして、物凄いスピードで真っ白な空間を移動しているうちに、洸平は意識を手放した。
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