忌み桜

3/3
前へ
/3ページ
次へ
彼女の声が急に聴こえなくなり、ふと脚元に目を落とすと、動かなくなった軀が横たわっていた。 「……くびり殺したのか、()が」 呆然と呟く。 「君が、あまりに五月蝿いからだろう。俺は、悪くはない。だが、この屍体は、片付けなけりゃいけない」 桜の樹の下には……と、綴っていたのは、どこの文豪だったろう? 桜は、その樹の根元に、狂気を孕んでいるからこそ美しいのだと、その文豪も言ってはいなかっただろうか? ならば──、 おまえも、桜の樹の下に葬ってやろう。 華やかな桜は、罪を内包してこそ、より妖艶に咲くだろうから……。 おまえを埋めた土を踏みしめ、(あで)やかに咲き誇る満開の桜を見上げる。 俺は、桜が(ゆえ)に好きになった──。 終
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加