(2)勝つためなら頭なんていくらでも下げる

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(2)勝つためなら頭なんていくらでも下げる

 思うようにはいかないものだ。  菜々子は、わたしと同じ学校の同じ学科に進学したのである。 「ねー。一緒に撮ろー」 「いいけど。たまには菜々子が撮ってよ」 「ごめぇーん。さっきママを撮りまくってたらスマホの電池切れちゃってぇ。そっちのスマホで撮ってもらっていいー?」  入学式で、さっそくこれである。  案の定、一歩下がられた。  高校でも三年間わたしの顔をデカくし続ける気だ。  絶対に許せない。  わたしは、“とあるスマホアプリ”の開発をおこなうことにした。  アプリ制作はかなり知識が必要な作業だった。情報処理を学びはじめたばかりのわたしには荷が重く、すぐに壁にぶち当たってしまった。  だが、わたしは諦めなかった。  中学生のころからやっていたネットゲームの同じチームに、則巻千兵衛(のりまきせんべえ)という名のアプリ開発に詳しそうな人がいた。 「わたしの顔デカコンプレックスをつつくようなことをしてくる許せない人がいて、どうしても報復したいの! 教えて! お願いします!」  わたしはチャットで事情を熱弁し、なんとか教えてもらえないかと頼んだ。  すると熱意が通じたのか、(よこしま)な動機にもかかわらず指導してくれることになった。
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