(5)いずれにせよ私の勝ち

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(5)いずれにせよ私の勝ち

 学校生活と芸能活動の両立で多忙の菜々子が、久しぶりの休みを取れたらしい。  ということで、二人でカフェに入っていた。 「あー、やっと二人だけで会えてうれしー」  パフェを食べながらそんなことを言う彼女を、わたしは心の中で(にら)みつけた。  彼女の顔デカ写真をばらまくというテロ計画は潰えた。悪運の強い女だ。  だが、それでも彼女に勝ちはない。  なぜなら、いかに大顔ブームを起こしてわたしのテロを防いだところで、彼女のリアルは大顔ではないからだ。  これから彼女と一緒に、普通のカメラアプリで写真を撮ればよい。  それをネットにアップすれば、彼女の顔が小さいことはすぐにバレる。“大顔修正疑惑”で彼女は炎上するに違いない。  一方、わたしは予想外の大顔ブームが幸いし、なんと彼氏ができた。充実した毎日を送っている。  アプリ開発のノウハウも身に着き、将来の道も開けてきてきた気がする。  だいぶ想定と違う展開になったが、結果オーライだ。  私の勝ちだろう。 「やっと言えるわー。ホントにごめんね」  ん? 「ほらー、私、すごい無神経だから。中学のころからさあ、あんたと写真撮るとき、私って一歩下がってたでしょ? あんたが顔の大きさにコンプレックスがあって嫌がってたなんて、全然気づいてなくてさー。  でもある日、あんたが『顔デカメラ』で私を撮り始めて、私そこで初めて気づいて。ほんっと申し訳なくて」  ……なぜ『顔デカメラ』の名前を知っている?  おかしい。 「え。もしかして、アプリ制作を教えてくれてた則巻千兵衛って――」 「うん。あれー、中身は私だったの」 「……」 「でも、今さら謝っても、ってなっちゃってさー。だからせめて何かあんたにお()び? になるようなことをしてから謝ったほうがいいかなって思ってぇー。だからモデルになることにしたんだわー。モデルになって、がんばって人気出るようにしてー、がんばって顔デカブームを作ったの。  これで許してもらえるかどうかはわかんないけどさー。これが私にできる精一杯の償い。ホントごめんねー」  あ、負けました。 (完)
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