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ここはとある大学の部室棟。
「ぐぇっ!」
潰れた蛙のような悲鳴を上げ、男は倒れた。明らかに異様なその声を聞きつけ部室から顔を出した男のサークル仲間たちが、廊下に倒れた男の姿を見て絶叫する。男の後頭部からとめどなく流れる血が、廊下の真ん中に大きな血の海を形成していた。
「救急車! 救急車!」
「おい、しっかりしろ尚雄! 何があった? 誰にやられたんだ!?」
必死の形相で呼びかける仲間たちに対し、男は残された力を振り絞って言葉を紡ぐ。
「……犯人は……鈴、木…………」
それっきり男は力尽きた。仲間たちは驚きのあまり救護の手を止め、互いに顔を見合わせる。
男の残したこの最後の言葉が後に大きな争いの火種となることを、この時はまだ誰も知らない……。
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