最後のとりで

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食事が済んでいとまをし 私と兄が帰る際に 車の中に置いておいた駐車表を返そうと 母の家に戻り 玄関を開けかけた時 ドアの奥から 母と芳弘の声が聞こえた。 「どうしたの? あまり話してなかったみたいだけど」 と母。 「塔子ちゃん あの2人とばかり話してた。 僕よりあの2人がいいの?」 「そんなこと…」 「子供と僕とどっちが大事?」 「…芳弘くんに決まってるでしょ」 50過ぎのオッサンがアホみたいに拗ねていた。 なんだこれ。 私はそっとドアを閉め 駐車表をドア外に立てかけてその場を離れた。 「マジか… でもまあ とりあえず幸せにやっていることはわかった。 それがわかればいいや」 後に私と兄は 芳弘のことを「ウニ男」と命名した。 こうして 私と兄は 帰れる実家を失ったのだ。
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