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異世界勇者パーティ
戦場を抜け街を見つけた運は街道から離れた位置にトラックを停車させた。どうやれば街に入れるのか等を考えた結果、その日はトラックの中で寝ることにした。長距離トラックには運転席の後ろに人がゆったり足を伸ばして寝られるだけのスペースがある。
そして翌朝。
「うわ、エグいなこのレベル。一体俺は何千、いや何万人やっちまったんだ……とは言え、殺らなきゃ俺が殺られていたはずだし……」
そこでナビ画面に表示された自分のステータスを確認していた。
「トラックは武器兼防具みたいなモンか。とにかく昨日みたいに命の危険は避けたい。俺こう言うの良く解らないから、とりあえずトラックに全振りしとくか。いざと言う時シェルターにもなるだろうし……一応スキルも把握しておいた方が良さそうだ」
しばらくナビ画面を操作するうちにその手が止まった。
「……ん? このスキルは?」
「運転手(トラック)の固有スキル運ぶもの。このスキルは撥ねた対象を異世界に飛ばすスキルです。西軍兵も何処か無数に存在する異世界に転移または転生したものと想定されます」
「殺した訳じゃないってこと?」
「定義によります。エヒモセスからの消滅を意味するなら……」
「説明は良い。きっと皆幸せなはずだ」
「かしこまりました」
「さて、ステータスの確認も済んだし、あとはどうやって街に入るかだが……」
エヒモセスでは長距離トラックを想定した街の作りになっていないことが門の大きさだけを見ても容易に判断できた。
「トラックを収納可能なスキルでも取得しておくか」
コンコン、そこへトラックをノックする者があった。運は窓を開けた。
「はい、何でしょう」
呼び掛けた者達は四人組の男女であり、見た目から冒険者と解る格好だった。
「お聞きしたいことがあるのですが、少しお話をよろしいですか?」
鎧を纏い剣を背に納めた男が言った。
「はい、解りました」
運はトラックを一瞬にして収納し地に降り立った。
「やはり、その格好は転移者ですよね?」
「あ、解りますか? と言うことは」
「はい。俺達も転移者または転生者です。俺は結城春斗、勇者です」
「俺は毒島塁、アサシン」
「アタシは市川あいり、魔法使いです」
「わ、私は……クオン、ヒーラーです」
「これはこれは。俺は……運転手? の日野と言います」
「運転手、そのままですね」
勇者は苦笑いをした。
「本当ですよ。ほら、この通り」
運はナビ画面のみを出現させ、ステータスを表示させて勇者に見せた。
「うわ凄い。自分のステータス画面なんて普通は簡単に確認できないんですよ?」
「あ、これトラックのナビ画面なんです」
「トラックにこんな利点が」
勇者は更に笑った。
「しかしまだステータスはそんなに高くないですね、日野さんはエヒモセスに来たばかりなんですか?」
「はい。実は昨日、気付けば転移してまして」
答えた瞬間、勇者パーティに緊張が走ったのが運にも解った。
(あれ、もしかして迂闊に喋り過ぎたか……?)
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