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異世界トラック
この国の若年層の死因、その第1位は自殺である。
自殺が1位である国は先進国の中でもこの国だけの特徴となっている。
関係の無い話だが、現在この国の流通業界は深刻な人材不足にある。
更に関係の無い話だが、この国の宗教的文化の一つにこんな都市伝説がある。
トラックに願いを込めて飛び込めば異世界への扉が開かれる、と。
これらの話に一切の関連性は無い。絶対にだ。
しかし何故か、今日もまた一人の女子高生がトラックに身を投げようとしていた。
都市伝説によれば、印象的な死は異世界で得られる能力に影響する可能性がある。
女子高生小林ヤバ子はその名の不幸を呪い、歩道橋を全速力で走った。そして地を力いっぱい蹴り出して、その柵を背面飛びで一気に飛び越えた。
その美しい放物線の先には長距離トラック。
落下中の小林ヤバ子と運転手の目が合う。
予測不可能な事態に運転手は驚き、ブレーキを蹴り付け、眼を瞑り、祈った。
やがてトラックは停止した。運転手の脳裏を駆け巡る走馬灯。
これからは人殺しとして終わった人生の消化のみが始まる、その事実が彼の心を死に等しいところまで追いやった。
この国に安楽死さえあれば少しは自殺も減ったのかも知れないが、全て後の祭り。
この国の貴重な流通業界の人材がまた一人失われた。
運転手は恐る恐る目を開いた。
目の前には何も無く、ただひたすらに広大な荒野が広がるばかりだった。
(ああ、ここがあの世ってやつか……)
男は思った。
「ん? てか死んだの俺じゃなくね?」
(普通に道路を走っていたはずなのに、何でこんな荒野にいるんだ……?)
「もしかして、異世界転移したのって……俺?」
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