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プロローグ
母との別れは突然だった。
中学1年の冬、雪が降る寒い日。
スタッドレスを履いてない車がスリップして、歩道を歩いていた母を轢いた。
轢死。
タイヤに身体が轢かれ下敷きになり、潰れぐちゃぐちゃになり、即死だった。
銀座の格式が高いクラブでママをしていた元アイドルの美しかった母。
私を孕んだ事で引退し、シングルマザーになり、私を育ててくれた。
名が知れてる人だったから、学校行事には1度も来た事がない。
だけど、朝起きたら必ず家にいて、美味しい朝ご飯を作ってくれて、そして、学校に行く私を玄関前まで見送りに出てくれた。
遺体の損傷が激しく、直葬で母を葬る。
水商売にも手を出していた母は、親戚全員から縁を切られていた。
だから、死を親戚に伝える必要はない。
勤めていたクラブの支配人には、警察から死亡の連絡がいった。
亡くなるまでの給料の支払いと弔慰金の支給、保険関係などの手続き、中学生の私に言われても困る事で、私と血縁のある父に連絡がいき、対応してくれた。
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