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沈黙が流れ、リナはちらりと蒼藍の顔を見る。
何か思い悩んでいるような表情だったが、リナの視線に気づき笑顔を作った。
「母、もしかして、わたし、疑われてる?」
殺人事件の場合、第一発見者が疑われることが多い。
警察が動物虐待を行っていた児童を犯人と考えているなら、リナも容疑者の一人になる。
蒼藍は暗い表情になった。
「わかった。でも、わたしじゃない」
リナにはその時の記憶がなくても確信ができる。
朝月を殺害したのは児童ではないと。
「ええ、私もリナが悪い子じゃないってわかってる」
答えた蒼藍だが、顔色は悪い。
その様子を見たリナは何となく、理由を察した。
(杵塚リナは悪い子だった)
元殺人鬼として目覚めた時点で良い子ではない。
「母、疲れたでしょ。帰って休んで」
冷たい言い方になっているが、蒼藍を心配してのことだ。
そして、リナ一人のほうが色々と動きやすいというのもある。
「そう、ね。パパにリナが目覚めたって連絡しないといけないし」
「母の父?」
「私のお父様じゃないわ。リナのパパよ」
父親の存在を失念していたリナ。
アデリーナだった頃には父親がいなかったので、自分の父だと思わなかったらしい。
「離れて暮らしてるから、忘れちゃうわよね」
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