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――アデリーナ。
何者かに呼ばれ、彼女はゆっくりと目を開ける。
まばゆい光の中、アデリーナは再び目覚めた。
既に生涯を終え、肉体はなく、目覚めることなどないはずだったのに。
――アデリーナ。
声とともに、光の中に人影が現れる。
眩しすぎる光のせいで顔は見えない。
――アデリーナ・ヴァロウ。お前は人を殺しすぎた。
男性とも女性とも取れない声。
声の主の姿は光に包まれていて見えないが、アデリーナは睨むような視線を声のした方に向ける。
――理由がどうであれ、多くの人を殺めたお前に贖いの試練を与える。お前が殺した人間の数だけ、殺人鬼を裁け。
一方的に告げる声の主。
――その魂に試練の回数を刻もう。贖いが終わるまで、お前は逃げられぬ宿命。
アデリーナの首にローマ数字が刻まれる。
その数は『ⅮⅭⅩⅢ』――一般的に使われるアラビア数字に直すと613。
アデリーナが葬ってきた総人数だった。
「あなたが神なの?」
やっと口を開いたアデリーナだが、声の主は答える気などないようだ。
――贖いのための新しい肉体を用意してやったぞ。今送ってやる。
声の主が最後まで上から目線な物言いで告げると、アデリーナの体が光に包まれた。
光にのまれると、シャボン玉が弾けるように姿が消える。
残ったのは、静寂だけだった。
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