転生先は小学生

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転生先は小学生

「リナ、リナ!」  誰かに呼ばれ、アデリーナは目を覚ます。  最後の記憶は光の中、姿の見えない声の主との会話だ。 「だれ?」  薄く開いた瞳に、窓から差し込む光が眩しい。  開ききらない目を細め、体を起こす。  まっさきに目に入ったのは、メイプルリーフのような大きさの手だった。 「こども?」  それはどう見ても子供の手だ。  小さな手のひらに戸惑っていると、誰かに抱きしめられた。 「リナ、良かった。目が覚めたのね!」  耳馴染みのない言葉のはずなのに理解できるという不思議な現象に、アデリーナは首を傾げる。  声の主が言っていた『新しい肉体』のようだ。 「あなた、だれ?」  アデリーナは自分を抱きしめていた女性に問い掛ける。  彼女の長い黒髪は、前世での同僚を思い出させた。 「えっ……」  誰と問い掛けられた彼女の表情がみるみる青くなっていく。 「リナ、あなたのママよ? 覚えてないの?」 「母親? あなたが?」  アデリーナは理解できないというように首を振る。  彼女にとって母親は忌むべき存在だった。 「ああ、なんてことなの……」  母親を名乗る女性は胸の前で手を組み、祈るような仕草をする。  アデリーナはそんな彼女に興味を失い、キョロキョロと辺りを見回した。  ベッドに部屋番号と主治医の名前が書いてあることから、ここが病院だと悟る。 「きねづか、りな?」  馴染みのある文字とは違う、角ばったり丸かったり画数の多い字も何故か読めた。  
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