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「ねえ、リナ。あなたが起きたから、警察の人が話を聞きに来るわ。辛いと思うけど、話せる?」
リナとしての記憶がほとんどないとはいえ、朝月の遺体を見つけたことは思い出した。
「だいじょうぶ。心配ない」
むしろ、警察の人間と話すことで事件の情報を聞き出せるとリナは考える。
殺人鬼を裁くことが課せられた試練なら、通常の捜査では逃げられてしまう可能性がある。
稀代の殺人鬼としての経験と記憶を持ち合わせたリナなら、犯人の残した痕跡や違和感を見つけられるかもしれない。
「リナがそう言うなら……」
蒼藍は心配そうな表情になりながらも、娘の意志を尊重してくれる。
それから30分程で、警察の担当者が病室に到着した。
「杵塚さん、どうも」
柔和な雰囲気の年配の刑事と、若い刑事の二人がリナの病室に入ってくる。
蒼藍は少し緊張した面持ちで彼らを迎え入れた。
「杵塚リナちゃんだね」
年配の刑事がリナに声をかける。
頷くと、リナは二人の刑事の表情を観察した。
(子供の証言だって期待してなさそうね)
少しだけ考えてから、リナは口を開く。
「朝月先生を殺した悪い人はまだ捕まってないんですか」
捜査状況を確認するため、しかし、努めて子供らしく聞いてみる。
年配の刑事は母親である蒼藍に目配せをし、彼女が頷いたのを確認してから話し始めた。
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