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見えたところで、首輪のようなタトゥーだと思われるだけだろう。
刻まれたアルファベット――ローマ数字が表す意味なんてわかるわけがない。
鏡に映ったリナの首にある刻印は『ⅮⅭⅩⅢ』と、変わらなかった。
神が言うとおり、殺人鬼を裁いていけば変わっていくのかもしれない。
「つまりは『Set a thief to catch a thief』ね」
海外版のことわざを完璧な発音で呟く。
日本のことわざに訳すなら『蛇の道は蛇に聞け』『毒をもって毒を制す』だろうか。
つまり、殺人鬼のことは殺人鬼に――ということだ。
「杵塚リナてしての記憶があれば、すぐに殺人犯がわかったと思うのに」
見解はまとまったものの、どう動いたら良いのかがリナにはわからない。
しかし、彼女の勘が正しければ、犯人の方から接触してくるはずだ。
「ただ待つのも退屈」
言いながら、リナはどう犯人を追い詰めるのかを考えていた。
(手っ取り早く殺してしまおうか……)
殺人に対する償いは死だと考えたリナだが、相手を殺害しようと思った瞬間、酷い頭痛に襲われる。
頭を押さえて踞ったところに蒼藍が戻ってきた。
「リナ!?」
彼女は床に踞っている娘を抱き起こすと、ベッドのところにあったナースコールを鳴らす。
程無くして看護師が様子を見に来た。
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