アデリーナ・ヴァロウ

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アデリーナ・ヴァロウ

 現代に蘇った切り裂きジャック――という異名を持つ、稀代の殺人鬼。  警察や特殊捜査官が総出で捜査してきたにも関わらず、犯人もその目的もわからず未解決のまま捜査は打ち切られた。  世界中にその異名を轟かせた彼の正体は、アデリーナ・ヴァロウという女性だった。  アデリーナ・ヴァロウの人生を一言で表すなら、『絵に書いた様な不幸』だろうか。  母親は娼婦で父親は不明。幼少期より、母から虐待を受けて育つ。  教会で読み書きを教わり、母親から逃れるように10代で結婚した。  しかし、夫は浮気性で愛人が何人もおり、愛人との間に子供まで作っていた。  アデリーナの最初の殺人は実母だ。  金の無心に押し掛けてきた母親を言葉巧みに外へ連れ出し、ナイフで切り裂いた。  その後も追い詰められるたび、母親と同じ娼婦たちを手にかけていった。  やがて殺意は、夫の愛人たちに向けられる。  浮気の事実などアデリーナにはどうでも良かった。  ただ、理由が欲しかっただけだ。自分を満たす理由を。  そしてついに、アデリーナが病で亡くなるまで、殺人鬼として逮捕されることはなかった。
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