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桜がそのアニメを見てみたいと無茶なことを言うから、コミック本をもって桜のところに行って、木の下に腰かけてページを開いた。さすがにテレビを外に持ってくることは出来ない。
「ちょっと見にくいな。もうちょっと右によって、そうそう、あともう少しゆっくり頁をめくってよ。細かいところまで見たいから」
なんて我儘な桜なんだ。
コミック本を読み終えると桜は「なんかもうちょっと、話にひねりが欲しいよね」と分かったようなことを言った。未就学児向けのコミックにひねりなんか求めないで欲しい。
また、ある時は桜は僕にお弁当を持ってきて桜の木の下で食べて欲しい、と言った。
「健介がお弁当食べてるとこ、見てみたい」
「だって桜はご飯食べられないでしょ?」
「分かってないなあ。見てるだけでも楽しいんだよ」
軽く握ったおにぎりとミニトマトとウインナーだけの簡単なお弁当をこっそり作って持って行って、桜の木の下に新聞紙を敷いて座って食べた。道行く人が「あら、一人でピクニック?」とにこにこするので恥ずかしかった。
桜が満足そうにふるふると枝を震わせたので、花びらが一枚ひらひらとミニトマトの上に降ってきた。
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