桜の下で背をはかる

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 桜が咲いている間、僕はとても忙しい。なんせ、桜は僕の一日にあったことを余さず聞きたがるのだ。 「今日、何したの?」 「誰と遊んだの?」 「お昼、何食べた?」 「大河ドラマ、どうなったか教えてね」  桜はまた、自分が咲いていない間の僕の生活のことも聞きたがった。 「夏休み楽しかった?」 「秋の運動会、赤組だった?白組だった?」 「冬はどうだった?スキーに行ったの?」  僕は桜に話して聞かせるために、いやでも自分の生活を充実させない訳にはいかない。何か面白いことがあると、お、これは桜と話す時のネタになるぞ、とワクワクする。  桜は意外と人間の生活に詳しくて、自分の立っている場所から動けないにもかかわらず何でも知っていた。 「だって、暇だから。いろんなところにアンテナ張っておかないと」  さわ、さわ、と楽しげに言う。 「しかも桜ってすっごい耳がいいんだよ。ここからだと大体半径5キロ先くらいまでの会話なら聞き取れるし、あとは鳥とか虫とかも情報を持ってきてくれるの」  なぜか誇らしげに桜は続けた。だから、色んなこと知ってるよ。  色んなこと知ってる理由はそれだけじゃないだろ、と僕は思ったけれど、口には出さなかった。
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