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桜が是非に、というので、僕は毎年桜の下で背を測る。七年前は100センチもなかったのにそこからめきめきと伸びて今はもう150センチに届く勢いだ。
「背丈の印、つけて」と桜が言うので、僕は驚いていった。
「痛くないの?」
「全然、大丈夫。だって外側の皮にちょっと印付けるだけだし。少しくすぐったいくらい」
こうしておいたら、毎年健介がどれくらい育ったか分かるしね。桜は嬉しそうだった。
「そのうち追い越されちゃうかもしれないなあ」
「何言ってんの、人間はどう頑張っても大体二メートル以上には伸びないように出来てるんだよ」
もちろん、桜の言いたいことはそういうことでもないんだろうけど、僕は気づかないふりをした。桜の幹に毎年付ける印は、次の年にはもう殆ど見えなくなっている。でもそのこと自体は桜はあまり気にしていないようだった。
「毎年測るっていうその行為自体が大事なんだよ」
重々しく、そう宣言するのだった。
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