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全校百人一首大会に向けて、今日もクラスで練習試合が行われている。
先生は札を読み上げていく。
「あまつ風 雲の通い路 吹き閉じよ 乙女の姿 しばし留めむ」
「「はい!」」
あちこちから声が上がり、札を取る音が聞こえてくる。
俺の名前は、恭介。
百人一首には自信がある。
明日の百人一首大会では、全校一位を目指している。
今日はクラス内での練習の日だが、俺は負けるつもりはない。
先生は次の札を読み始める。
「め……」
「はい!」
俺はすかさず札を取る。
俺が取った下の句は『雲隠れにし 夜半の月かな』
みんなは驚いた表情で俺を見る。
先生はまだ、「め」しか言っていないからだ。
さて、合っているかな?
「めぐりあいて 見しやそれとも 分かぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな」
「恭介、すげぇな……」
隣にいるクラスメイトが感嘆の声を上げる。
俺はドヤ顔で、取った札を横に積み上げる。
ちなみに、この歌は紫式部が詠んだものだ。
練習試合は進んでいく。
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