桜の札が嫌いだ__恋の百人一首__

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「咲良さんって、百人一首、得意だったんだね」 「え? あ……うん。恭介くん、すごいね。1位おめでとう!」 「それほどでもないよ」 咲良さんから褒められて、俺は有頂天になってしまう。 俺は、気になっていたことを咲良さんに聞いた。 「あのさ……咲良さんが取っていた(ふだ)って……」 「あ! バレた? さすが、恭介くん」 そう言う咲良さんの白い頬に、うっすらと赤みが差した。 まるで、雪原に咲く花のようだ。 「咲良さんが取っていた(ふだ)って、桜を()んだ歌だよね」 「うん。私、自分の名前が咲良(さくら)だから、(さくら)を詠んだ歌だけは絶対に取ろうと思って」 「やっぱりそうだったんだ。納得」 俺は一目惚れした咲良さんと、いい感じに話をすることができた。 きっと、俺の顔も赤くなっていたことだろう。
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