16人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝、俺はいつもより早く起きてしまった。
そして、とてつもなく眠い……
睡眠が浅かったようだ。
で、咲良さんの夢を見たのかというと、そんなご都合主義的な展開があるはずもなく、俺は何の夢も見ていなかった。
『すみの江の 岸による波 よるさえや 夢の通い路 人目よくらむ』
夢の通い路で、俺は咲良さんに会うことはできなかった……
* * *
俺は教室に入った。
咲良さんは、相変わらず白い顔をしており、そして、無表情だ。
なんとなく近づきがたい雰囲気がある。
しかし、俺は知っている。
百人一首の札を取った時に見せる咲良さんのステキな笑顔を。
当たって砕けろ!
俺は、咲良さんと仲良くなりたくて、思い切って話しかけてみた。
「今日は百人一首大会だね。どう? 自信ある?」
「え? えぇ……うん。まぁまぁかな。恭介くんは全校一位を取れそう?」
「う、うん……まぁ、頑張るよ。咲良さんは、やっぱり今日も、桜の札を全部取るの?」
「え? 全部取れるかは分からないけど、桜を歌った札はできるだけたくさん取りたいな」
「たくさん取れるといいね」
よし、咲良さんと自然に会話ができたぞ!
今日の百人一首大会で優勝して、咲良さんに俺のすごさを認めてもらおう!
最初のコメントを投稿しよう!