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「いにしえの 奈良の都の……」
「はい!」
目の前に座っている女の子が札を取った。
俺は驚き、その子の顔を見る。
咲良さんだ。
咲良さんは、色が白く、整った顔立ちをしているが、あまり笑わないので、なんとなくとっつきにくい感じがする子だ。
上の句を読んでいるうちに札を取ってくるということは、この歌を暗記しているということ。
ほとんどのクラスメイトは、下の句を読み始めないと札を取れない。
百人一首を暗記している生徒なんて、あまりいないからだ。
しかし、咲良さんは上の句を読んでいるうちに取ってきた。
まじめそうな感じの子だし、家で練習してきたのかもしれない。
意外なライバル出現だ。
次の札が読まれる。
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