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『やあ』?なんだその爽やかな挨拶は。わたしの脳が生み出したであろう幻聴にしては分不応そうな挨拶だな。もっと身分を弁えろよ、わたしの脳。
で、そんなことを考えながら歩いていると、さっき幻聴が聞こえてきた方向から「パチンッ」という――指パッチンのような音がして、わたしの立っていた地面は上質な絹のようにやわらくなった。
簡潔に言えば落下した。
「はあ!?」
え? 何々? なんなのこの状況、このジェットコースターが最初から急降下状態みたいな状況はなんなの? 今って冒頭じゃないの? 初回じゃないの? 最初の回と書いて初回じゃないの? もしくは初話じゃないの? 最初の話と書いて初話じゃないの?
とまあ、わたしの脳内は大量のクエスチョンで満たされたわけだが、そんなクエスチョン達の相手をしているほどの余裕は今のわたしにはなかった――地面が見えてきたのだ。コンクリート製の。いや死ぬじゃねえかよ、それもかなり確実に。
まあまあ、というわけで、わたしはコンクリートの地面に激突した。
「やあ、また会ったね…暗違ちゃん」
無様にもうつ伏せで倒れているわたしに、そう声がかけられた――さっきの幻聴である。
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