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目が覚めると、羽毛のようなふわりとした白い雪が、朝陽を浴びて舞っていた。
「なごり雪……」
式は十時からだ。今から支度をすれば十分間に合う。
目尻に残る涙を両手で拭うと、私はゆっくり起き上がった。
私は今日、大好きだった真人先輩に、通算何度目かの告白をする。
中学から高校まで、星の数ほど告白し、その数と同じ数だけフラれてきたのだ。
でもそれも、今日で終わり。
私はこれから、真人先輩に、最後の告白をしに行くのだ。
フォーマルウエアに身を包み、姿見の中に自分を映す。
普段は一つに束ねている髪を、今日は下ろして念入りにブローした。
うん。決まってる。
「城田は綺麗な髪してるんだから、伸ばした方がいいと思う」
バレーボールに明け暮れていた高校時代、真人先輩が言ってくれた。
子供の頃からずっと短かった私の髪は、その一言で、あっという間に肩まで伸びた。
「髪の毛、褒めてくれるかな?」
胸の辺りで切り揃えてある艶やかな髪をそっと撫でる。
「そんなわけないか」
涙が溢れ、私の頬を再び濡らした。
突如、テーブルの上のスマホが震える。梨々子からだ。私はすぐさまスマホを拾い上げると、トークアプリを開いた。
『おはよ。ちゃんと眠れた? 終わったらうちにおいで。いい酒いっぱい調達しとくよ』
こんな時、明るく送り出してくれる親友の存在はありがたい。
『ありがとう。頑張ってフラれてくる』
ぐいっと手の甲で涙を拭うと、私は、オレンジ色のカーネーションを手に家を出た。
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