オレンジ色のカーネーション

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「最近、真人先輩と仲いいね」  親友の梨々子に冷やかされた。 「そうかなぁ?」  謙遜しながらも、内心ではガッツポーズだ。 「真人先輩、優しいもんね」  梨々子が口の端を持ち上げ、からかうように私を見やった。  真人先輩の名字は佐藤なのだが、男バレにはもう一人、佐藤という名字の部員がいる。その先輩と区別するため、真人先輩は名前呼びになったのだと、前に他の先輩から聞いていた。  けれども、あちらは名字で呼ばれているということは、真人先輩の方が幾分周りに慕われているのだろう。 「だよねぇ」  私は空を見上げ、顔を綻ばせた。 「でもさ、フラれたんでしょ? よく話せるよね?」 「だからだよ」 「へっ?」  鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、梨々子が私を見つめる。 「私のことよく知らないっていうから、今度はよく知ってもらった上でリベンジするの」  一瞬の間のあと、はぁっと呆れたようなため息を漏らし、梨々子は僅かに身体を仰け反らせた。 「さすが未来のキャプテン候補。言うこと違うわぁ」 「茶化すな!」  私は梨々子の太ももに、軽く蹴りを入れてやった。  二度目の告白は、中二の春。進級と同時に告白した。  結果は撃沈。 「中学生活最後の年は、部活に全てを捧げたい」  さすがキャプテン。言うこと違うわぁ。  梨々子の小馬鹿にしたような流し目を思い出し、心の中でひとり笑った。  三度目の告白は、三年生の引退試合が終わった後。  またもや撃沈。 「受験に専念したいから」  はい。ごもっとも。  そんな私も、梨々子の予言通りキャプテンに就任し、恋だの愛だの言ってられないくらいハードな日々に突入した。
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