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中学を卒業した私は、約束通り真人先輩と同じ高校に進学した。先輩からは、「約束した覚えはない」って言われそうだけど。
高校でも、事あるごとに告白を試み、例外なくその都度フラれた。
その頃にはだいぶ仲良くなっていて、顔を合わせれば他愛ない話で盛り上がることもしばしばだった。
ある日の部活終わり、仲間と髪型のことを話していた時、帰り支度を終えた真人先輩が偶然横を通りかかった。
お疲れ、と挨拶して通り過ぎる真人先輩を、私は慌てて呼び止めた。
「私って、ショートとロング、どっちが似合うと思います?」
短い髪を指先で摘む私の顔をしばらくじっと見つめたあと、
「城田は綺麗な髪してるんだから、伸ばした方がいいと思う」
うん、とひとつ頷くと、「気をつけて帰れよ」と真人先輩は柔らかく微笑んだ。
手応えはあった。距離は確実に近くなっているはずだった。
なのに真人先輩は、
「俺、遠距離とか無理だから」
卒業式。二本目となるオレンジ色のカーネーションを受け取りながら、三年前と同じく眉を寄せ、申し訳なさそうにそう言ったのだ。
先輩とは、それきりだった。
さすがに大学まで追いかける根性はなかった。というか、頭のレベルが違いすぎた。
だからこの再会は、実に七年ぶりのことだったのだ。
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