オレンジ色のカーネーション

6/9
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 中学を卒業した私は、約束通り真人先輩と同じ高校に進学した。先輩からは、「約束した覚えはない」って言われそうだけど。  高校でも、事あるごとに告白を試み、例外なくその都度フラれた。  その頃にはだいぶ仲良くなっていて、顔を合わせれば他愛ない話で盛り上がることもしばしばだった。  ある日の部活終わり、仲間と髪型のことを話していた時、帰り支度を終えた真人先輩が偶然横を通りかかった。  お疲れ、と挨拶して通り過ぎる真人先輩を、私は慌てて呼び止めた。 「私って、ショートとロング、どっちが似合うと思います?」  短い髪を指先で摘む私の顔をしばらくじっと見つめたあと、 「城田は綺麗な髪してるんだから、伸ばした方がいいと思う」  うん、とひとつ頷くと、「気をつけて帰れよ」と真人先輩は柔らかく微笑んだ。  手応えはあった。距離は確実に近くなっているはずだった。  なのに真人先輩は、 「俺、遠距離とか無理だから」  卒業式。二本目となるオレンジ色のカーネーションを受け取りながら、三年前と同じく眉を寄せ、申し訳なさそうにそう言ったのだ。  先輩とは、それきりだった。  さすがに大学まで追いかける根性はなかった。というか、頭のレベルが違いすぎた。  だからこの再会は、実に七年ぶりのことだったのだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!