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 言われたとおりに横になる。 「もうちょい奥行って」 「あ、ああ、うん」  伊織がベッドに膝をついた。重みでベッドぎしりと撓む。身体をずらして奥へと移動した。雄大の横に伊織が寝そべる。 「ったく……、何でこんな……」  ぼそぼそと言った伊織が身体を反転させる。覆いかぶさってきた伊織に、「何?」と聞いてみたが、返事はない。 (なんか、いつもと違って見える)  見上げているからだろうか。見慣れているはずの伊織が、違う人みたいに見えた。 「雄大、無理になったら止めろよ」  確認するみたいに伊織が言う。  やったことがないことに興味もあるし、試してみたいとは思っている。けれど実際にしてみたら無理かもしれない。大丈夫だとは言えなくて、雄大は「わかった」と伊織に答えた。  伊織の顔が下がってくる。瞼を閉じたら、唇が重なった。  柔らかく押し当てられた唇が、チュッと音を立てて離れていく。もう一度唇が近づいてきたとき、雄大は軽く唇を開いた。 「ん……」  隙間から、伊織の舌が入ってくる。雄大の舌に絡みついてきた舌が、くるりと一周する。引かれた舌を追いかけて舌を伸ばしたら、ぢぅっと舌先を吸われた。唾液の絡む音が頭に響く。 (うん。やっぱ気持ちいい)  上あごを舌先で撫でられる。はじめて伊織とキスしたときと同じ変化が、身体に現れだした。直接屹立を触られているわけでもないのに、下腹あたりにじんわりと熱を集まっていく。 「っ、ぁ……」 (勃ちそう……)  見知った感覚にもぞもぞと腰が動いた。  パンツの上に伊織の手が当たった。膨らみはじめている屹立を布越しに撫でた伊織の唇が離れる。 「んっ……、ぁ……」  刺激に思わず腰を引いたからだろう。慌てた様子で伊織がさっと手を引いた。 「っ、悪い……。平気か?」 (……? 伊織?)  女とは経験があるのだ。伊織に触られたのははじめてだけれど、そんなに心配してもらうようなことではない。別に痛いことをされているわけではないし、そもそもやってみたいと言い出したのは雄大だ。 「平気……、伊織のも」  身体を起こし、手を伸ばした。伊織のベルトを掴もうとしたら、今度は伊織が腰を引いた。 「ちょっ……、俺はいい……」 「なんで? 一緒にやりたい」  伊織が雄大の手を掴んでくる。伊織の手を引きはがして、ベルトをグイと引っ張る。パンツのボタンを外して、ファスナーを下ろした。 (え? マジ?)
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