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バスチアンの計らいでしっかり寝かせてもらったユエルが目覚めたのは15時頃だった。昼食をすっ飛ばしてしまったためお腹は空いているが、今食べてしまうと夕食が入らなくなってしまうので、何時もよりしっかりとしたティータイムを摂ることにした。
「ふぁぁ〜〜やっぱりどれを食べても美味しい…幸せ」
前世でも甘いものは好きだったが今世でもそれは同じようだ。今がどれほどの文明なのかは分からないが、食事は前世と同じ様なレベルで助かった。もしかしたら公爵家という地位がそうさせているのかもしれないが、美食文化と言っても過言ではない日本育ちなのだ。食事が美味しくなくては生きていけない自身がある。
(そう思うとお風呂もすぐに入れるからよかった)
電気という概念はないが、変わりに魔石を利用した文化が発達している。そのおかげで料理を作るのもお風呂も火の魔石や水の魔石を利用しているとバスチアンから説明を受けた。ただ魔石は一つ買えば中々の期間持つらしいのだがやはり高級品。一般的な庶民では毎日温かいお風呂に入ることはないらしい。
「余程お気に召されたのですね。シェフが喜びます」
「うん。今日のおやつも絶品だったって伝えててほしい」
今日のティータイムは軽いサンドイッチやスコーン、それになんとチョコレートケーキまで出てきた。貴族社会といえば中世ヨーロッパをイメージしていたため、1800年代後半にようやく普及しだした甘いチョコレートを食べれるとは思っていなかったのだ。
(ま、魔法があるんだし全然違う世界観でも可笑しくないわけで、美味しいものが食べれるんならいっかー)
「ごちそうさまでした!」
さて、本来なら午後からも講義があったはずなのだが、バーンズ夫人の件のおかげでなくなってしまった。何をしようかと思案しているとふと疑問に思う。
「バスチアン」
「何でございましょう」
「僕は庭の散歩や図書室に行ったりと自由に動いて良いのか?」
思い出せる限りでは、ユエルはいつも部屋の中にいた。出歩くと言っても食堂くらいなもので、もしかして許可が必要なのかと思ったのだ。
「もちろんでごさいます。ここはユエル様の屋敷ですからな、誰も咎めるものなどおりません。医師からも適度な運動であればと言われておりますよ」
「そっか、よかった!じゃあ今からちょっと散歩に出ようかな」
「かしこまりました」
前世を思い出してから初めて外(敷地内だけど)に出るのでワクワクする。元々は外が苦手だったのかもしれないが、7歳児であれば無尽蔵の体力と言われても可笑しくないほどやんちゃ盛りであるはず。まだまだじっとしているのも苦手なはずの年齢なのだから、本来のユエルも外に出たくてウズウズしていた部分があるはずだ。全て憶測でしかないが、こんなにワクワクしているのだからあながち外れていないだろう。さて、公爵家の庭とはどれ程のものか、散策といこう!
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