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前世の『俺』は、両親と妹の四人家族で普通の一般家庭で育った。名前は優月(ゆずき)。高校からバンドを組んで『俺』はギターボーカルとして活動し、かなり力を入れていた。大学にも通わせてもらったが、在学中もバンド活動を休むことはせず、インディーズバンドとしてスタジオで歌ったりしてかなり充実した日々を送っていた。結局大学卒業後も2年程就職せずにバンド生活を送り、遂にメジャーデビューが決まり仲間と喜びを分かち合った。しかしそんな帰り道…。 (うわー居眠り運転のトラックに引かれるとかどこの漫画!しかもこれって異世界転生ってやつじゃね?マジかー) まだズキズキと頭は痛むが、もう一度そろりと鏡を見てみる。やはり先ほど見た銀髪に青い瞳をした美少年がいる。前世と今世の記憶がまだ混同しているため、何だか違和感を感じる。段々思い出した中で、『僕』はまだ7歳になったばかり。24年生きた前世の自我の方が強いのは当たり前かと納得する。 しばらくうずくまったままでいると、扉が開く気配がする。 「坊ちゃま!お気づきになられたのですね。このような場所でうずくまっておられるなど…まだお加減がよろしくないのでしょう。ベッドへ戻りましょう」 そう矢継ぎ早に話しかけられた方を見ると、壮年の正しく爺やと呼びたくなるような執事服を着た人がいた。記憶が混同したままのためパッと名前は出てこないが、主にユエルの世話をしてくれていたということはわかる。 かなり我が儘に過ごしてきたため、使用人にも忌避されていたが、この爺やらしき人だけは根気よく諭し、ユエルと向き合ってきていた。 「えーと……」 「坊ちゃま、いかがなされました。よもやこのじぃの言っていることが分からないわけではありますまい?」 名前が出てこず、元の姿勢のまま悩み、何といえばいいのか分からないユエルの鈍い反応に爺やさんは慌てたように問いかけてくる。 「ごめんなさい、名前が出てこなくて…」 「っ!坊ちゃまが、謝られ…このじぃのことも分からぬなど…あぁぁ、直ぐに医師を呼んでまいりますゆえ、一先ずベッドへ行きましょう」 謝ったことに対してまずは驚かれてしまい、以前の自分の行いがどれほどひどいのか、思い出せたことが少ないのに理解してしまった。 (これからどうなるんだろう。…っていうか鈴の音を転がしたような声って、美少年は声まで美少年…って意味わかんない頭の悪い感想しか出てこない……)
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