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「そうだ父上!お願い事が決まったんです。今お伝えしてもいいですか?」 空気をかえるために、あえて明るい口調で尋ねてみる。すると静かにやり取りを見守っていた父上が何とも言えない表情になりながらユエルを見据える。 「もう決まったのか?もっとゆっくり考えてもいいんだぞ」 「大丈夫です!と、言いたいところなんですが、実はお願い事が一つではなくて……」 「ふんっどうせこれを機に無茶苦茶なお願い事ばかりするんだろ」 「………エイデン」 「無茶苦茶かどうか、聞いてもいないのにそう判断するって、さっきの話は聞いてなかったんですね。…すぐに態度を改めてもらおうなどとは思っていませんが、少しくらいちゃんと自分の目で見てから文句を言ってください」 父上が溜息を吐きながらまた話し出そうとしたので、少し遮るようなタイミングで話し出す。長々と話したことをまるっとなかったことにされたようで、先ほどの時間や労力を返してほしい。如何せん精神年齢は7歳に引きずられているようで、考え方は24歳のものだろうとムッとくることに関してあまり我慢することはできないようだ。深く考えるより前に口を衝いて出てしまった。思考と行動が、数分前の自分とも違うように思えて少し気持ち悪いが、完全に統合されていないからだと思っておこう。 「……」 「………まぁいいです。それでですね、お願い事、一つじゃなくてもいいですか?」 だんまりとして目線を逸らしてしまったエイデンをじっとりと見てしまうが、今はそれよりもお願い事を聞いてほしい。 「ふむ。まぁ初めに一つだけだとも言っていなかったからな。内容にもよるが、一先ず言ってみなさい」 「ありがとうございます!えーとですね、まず一つ目が、髪を切りたいです!」 「……は?髪?………今のままではいけないのか?」 「だって男にしては長くてちょっと邪魔だなって……」 「………どの程度まで切りたいんだ?10㎝くらいか?」 「バッサリと!首元はさっぱりさせたいです!」 「………ボブとかいう髪型でいいか?」 「……父上のようにしたいです」 「……………いいだろう」 話している調子から、なぜだかユエルには長髪でいてほしいような感情がヒシヒシと伝わってくる。なので、子供に言われて嫌な気にならないであろう、父上の真似をしたいのだというニュアンスで伝えてみると、苦渋の決断だというような間を開けて許可が出る。今まで何を考えているのか全く分からなかったのに、今は何となくわかるのだから不思議なものだ。 「やった!ありがとうございます。えっと、じゃあ次のお願い事なんですけど、剣術とか乗馬、魔術を習いたいです!」 「乗馬や魔術はともかく、剣術もか?」 数日間の授業内容から、乗馬や魔術は貴族の子息子女ほとんどの者が学ぶものだと聞いていたので、多少それが早まっても大丈夫なのではないかと思い言ってみたので、許可は下りるだろうと思っていた。剣術も、兄上たちが習っているので特に問題はないだろうと思っていたのだが、あまり反応が良くない。 (髪を切るのも反応が良くなかったし、何か理由でもあるのかな?)
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