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あの夕食を食べてから、第一王子殿下のパーティーまではあっという間だった。バーンズ夫人の授業があまり為になるものでは無かったと判断され、最低限のマナーを改めて叩き込まれ、もし第一王子殿下に名前を呼ぶ許可をもらったらリアム王子殿下かリアム殿下と呼ぶようにと教えられたくらいだ。そういえば歴史の授業で、クロイツフェルト王家ということは教わっていたが、肝心の王子殿下の名前を知らなかったということに自分でも驚いた程だ。パーティーの主役の名前を知らないなんて、失礼にも程があるだろう。 とまぁそんなビックリなこともありつつも、鞭で打たれた傷もあり、自然治癒力も落ちている中で授業を詰め込んではいけないと判断されたのだろう。かなり時間にゆとりが出来たので、その時間は基礎体力をつけるためにウォーキングから始めてみたり、腹筋と背筋のトレーニングをしたり、庭で歌ってみたりと割と自由に過ごした。 それになんといっても髪をバッサリと切ってもらえたのだ!お風呂に入るのも髪を乾かすのも相当煩わしかったのがすっかり解決したので気分は上々。ちなみに評判も上々だった。 そんなユエルとしては充実した日々を送っていたため、本当にあっという間に時間が過ぎたのだ。 「ねぇバスチアン、本当にこの服で行くの?」 「作用でございますが、何か問題でもありましたかな?」 「いや、ちょっと派手じゃない?」 「何をおっしゃいます、坊ちゃま。坊ちゃまの御髪や瞳に合わせた色合いですぞ。これ以上似合う物はありませんとも!」 「いや、まぁ色は良いと思うんだけど、その、これだけのフリルって必要かなぁ?」 そうなのだ。服はブルーと白を貴重とした色なので問題はない。ガーデンパーティーとはいえ、第一王子殿下の誕生日を祝うためのものなのだから、普段よりも華やかに、形が違うものになるのも理解できる。しかし気になるのがこのフリルの量なのだ。シャツの襟や前立て、袖口など至る所にフリルがこれでもかとついているのだ。スカーフがこれまたもこもことして見えるのに必要なのだろうか?そして実は細かなレースも使用されているのだが、そのフリルに目を奪われるためレースが目立たない。いや、これ本当に必要か?と凄く疑問に思うのだ。 「それは以前坊ちゃまがフリルを好まれていたので…もしや好みも変わられましたか?」 「うーん、袖口も少し減らしてほしいけど、前立てとか襟はスカーフも付けるんだし、必要ないんじゃないかなぁ?まぁスカーフも出来ればシュッとしたやつが良いけど…」 「シュッと、でございますか?」 「うん。シュッと。えーと、フリルとかじゃなくて、ボリュームがあまり出ない、スマートに見えるような?直前に言って悪いけど……」 そうなのだ、パーティーは明日。今は寝る前に、そういえば服装はどうするのかと気になってバスチアンに尋ねると態々出してきてくれたのだ。 幸い上着?はそれほどフリルが多いわけではないので、シャツさえどうにかなったらあまり気にせず着られると思う。 「うぅむ。出来るだけご意見に添えるよう調整はしてみましょう」 「ごめんね。よろしく頼むよ」 自分が無茶なことをお願いしていることはわかっているので、申し訳無さからつい苦笑いになってしまう。 明日の朝までというタイムリミットで、どこまで出来るのだろうか。何も変えることが出来ないまま、このフリフリで行く覚悟だけはしておこうと心の中で独りごちるユエルであった。
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