26/86
前へ
/86ページ
次へ
父上と共に馬車に揺られて王城に向かっている。どういう流れになるのかと聞いてみると、はじめは親子揃って立食パーティーに参加し、王妃殿下と第一王子殿下にご挨拶。みんなの挨拶が終わったら大人と子どもに別れて交流を深めるのだとか。 (挨拶を切り抜けたら友達探しが出来るのか…) 今回は正式な夜会ではないため、通常であれば高位貴族から挨拶していくのだが、今回は順番は特に無いそうだ。 初めて屋敷以外の人と会うことになるので、不安も緊張もそこそこあるのだが、何だかそれは遠い昔の優月が小学校に入学した頃の感覚に似ている気がした。 特に父上と会話らしい会話は無かったけれど、馬車の窓から町並みを見ることが出来て楽しい道中だった。レンガ造りの街並みが続き、草花もみかけ明るい笑顔が飛び交うような街だった。ずっと窓の外を見ているユエルに、父上が朝市や週末にはバザーが多く並ぶということを軽く説明してくれたので、いつか行ってみたいと思っていると王城に着いたようだ。 馬車から降りてふと周りを見回してみると、正面の門から入り馬車停め?ロータリーのような場所に停められている。直ぐ側には立派な城。前世で見たノイシュバンシュタイン城?のようで、細長い尖塔がいくつか見える。ぽかりと口を開けて城を見上げていたが、父上から声をかけられ我に返る。 ガーデンパーティーが行われる庭はいくつかあるうちの比較的大きな、王妃殿下が管理している庭だと案内されながら説明を受ける。 ようやく会場にたどり着くと結構な人数が既に揃っていて、何故か一斉に振り向いて見られている。一体何なんだと思いながらもそれとなく父上の陰に隠れてみる。前世で歌を歌っていたので人前に出ることには慣れているはずだが、意味も分からず一斉に注目されると隠れてしまいたくなる。こんな雰囲気の中友達ができるのかと疑問に思いながらも会場の中を歩いていき、使用人にサーブされた飲み物を父上から受け取る。 「王族の方々がいらっしゃるのはもう少し先になるだろうから、好きにしていなさい。いらっしゃっても今回は挨拶の順番が決まっていないから、多少ゆっくりしていても大丈夫だ」 会場中の視線を受けて、どことなくソワソワとしていたからか、父上からそう声をかけられる。それに一つ頷くと、見るだけで話しかけてこない人たちのことを気にしていてもしょうがないのだし、せっかくだから料理を楽しんでしまおう。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

688人が本棚に入れています
本棚に追加