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そこからはあっという間だった。先ほどの爺やらしき人はバスチアンと言うらしく、名前を聞くと確かにそんな感じだったという記憶と、セバスチャンじゃないのかという気持ちが同時に現れて混乱した。まぁそんなバスチアンが大慌てで医師を連れてきて診察された結果 「記憶障害の一種でしょうな」 の一言だった。この世界の医療水準がどんなものかはわからんが、そんな一言だけだったら医師でなくともできるだろうというのが正直な感想である。 「先生、やはり頭を強く打ったことが原因なのでしょうか」 「うむ。その可能性は大いにあるでしょうな。まれに強いストレスを感じることでも記憶障害を起こすことはありますが…」 「そんな…」 「まぁ記憶は突然戻ることもありますので様子を見るしかありませんな」 「坊ちゃま!おいたわしや」 どんどんユエルの記憶はハッキリしてきている気もするが、7歳の記憶と24年生きた前世の記憶だと、どうしても前世の方が強くでるのは当たり前だと思うし、しばらくは混乱するだろうと考えていたらバスチアンに嘆かれている。ユエルの記憶が全くないのであれば『俺』が体を乗っ取ったのか⁈とショックを受けていただろうがそうではないようだし、一先ずは良しとするしかないだろう。 「バスチアン、そんなに泣かないでくれ。僕は大丈夫だ」 「坊ちゃま…いけませんな。一番不安なのは坊ちゃまですのに、じぃがこの様では…じぃが全力でサポートしますからな!」 「ふふっ、心強いよ。よろしく頼むなバスチアン」 「……以前のようにじぃと呼んでいただいてもよろしいのですよ?」 「んー、まぁせっかくの機会だと思って、ちゃんと名前を呼ぶよ」 話し口調などはユエルが話していたままが違和感がないのだが、じぃと呼ぶことには羞恥心を感じるため、そこは優月の感覚が強いのだろう。やっぱり慣れるまでに時間はかかりそうだ。
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