45/86
前へ
/86ページ
次へ
「何をしているのかな?ラオシュ。今すぐその手を下ろしなさい」 「いきなり来てなんだよ!こいつはオレにフケイをはたらいたんだ。それにこの庭に勝手に入ってきてるんだぞ!見つけたオレがバツを与えるんだからな、兄上は口出しするな!」 そうやってまたラオシュが喚いている間に、颯爽と現れたノアが近づいてきてさり気なく腰を抱かれる。だから7歳にしてこのスマートさは何なのだとツッコミを入れたくなるが、流石に今はそんなことを言える空気ではないことは理解している。 「ふーん?おかしなことを言うね。私が庭を見る許可を出したのだが、ターナー、どういうことだい?」 いつものことなのか、ラオシュ本人に詳しいことを聞かずにターナーに事情の説明を求めるノアは、何処となく怒っているような気がする。 「申し訳ございませんリアム殿下。状況のご説明をさせていただこうとは試みたのですが、ラオシュ殿下に口を挟むなと命令されてしまい…」 「ターナーさんは悪くないよ。一方的に第二王子殿下がずっとわめ、んんっ怒っていたから。あの状態で無理に話してくれてたら絶対クビだなんだって言われてたと思う」 自分に対してならまだ何とかなると思う。なんて言ったって天下の公爵家の者だから。王族を除けば一番上の家格の者に、しょうもない理由で罰は与えられないだろう。しかし使用人であるターナーはわからない。どんな家格かも知らないし、どれほどの立場にあるのかも知らない。もしかしたらアホみたいな理由でも王族が言ったことだからと本当に罰を与えられるかもしれないのだ。きっとノアがそんなことさせないとは思うのだが、陛下や王妃様がどんな人かはわからないのだ。同じ人に育てられてる筈なのに、ノアとラオシュの性格が全く違うのだから。 「そうか…ラオシュが言っていた不敬というのは?」 「そんなに怒鳴らなくても聞こえてるって言ったら突然?それか敬語を使わなかったから?じゃなかったら…なんだろ、時間があるからってとっとと退散しようとしたこと?」 「へぇ……。ラオシュ、私の婚約者に対してそんな態度を取られると困るな。不敬を働いたというが、君の方が初対面の相手に対して失礼な態度を取っているだろう。それに、私付きの執事が共にいるのに説明をさせないだなんて、どういうつもりだい?」 「そ、そんなの、兄上の執事だなんて、オレは知らない!」 「そうなの?一緒に居ることが多いのだけど……。それにしてもラオシュ、君の使用人は何をしているのかな?まさかまた撒いてきただなんて、言わないよね?君もまだ授業があるはずだけど?」 「ラオシュ殿下〜どこですか〜」 ノアが尋ねた丁度その時、遠くの方からラオシュを探す声が聞こえてきた。かすかな声なので、まだ距離は離れていそうだ。 「んぐっ」 「はぁ……。このことは父上と母上にもお伝えしておくよ。くれぐれも、今後はこのようなことが無いように。さぁユエ、行こうか」 「あ、うん。………では第二王子殿下、失礼します」 最低限の礼儀だと、ラオシュに向かって礼をしておく。笑顔なんて全く作れなかったが、それくらいはいいだろう。そんなことを思いながら顔を上げると、かなり不服そうで、悔しそうな顔をしたラオシュと目があった。流石にノアには何も言わないが、一人の時にまた会うことがあればいろいろと言われそうなので、是非とも回避したい。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

708人が本棚に入れています
本棚に追加