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「ごめんねユエ。退屈しのぎになればと庭を見てもらっていたのに、あれに絡まれるなんて……」
「ノアのせいじゃないよ。誰が何処に居るかなんて分からないし、ましてや第二王子殿下は授業を受けてるはずだったんでしょ?」
「まぁそうなんだけどね。そもそも私が遅れたから…」
「あぁ、予定が押してるって言ってたね。そんなに忙しいって、大変だね」
まだ子どもなのにと自分を棚に上げてしみじみと思ってしまう。
「……私とユエの婚約をどこからか嗅ぎつけた高位貴族当主たちがね、連日煩くて。何度も説明しているのに自分たちは納得していないと。私の婚約に必要なのは陛下の許可だけなのに、おかしなことを言う者たちが多くて困ったものだよ」
「あ、はははは。お疲れ様。ありがとう、ごめんね?」
本当に辟易としているのだろう声で話すノアに、申し訳なくなってしまう。きっとノアに詰め寄っているのはこれ以上公爵家に力をつけさせたくない者、同じ年頃の娘、息子がいる者。その人たちの反論を跳ね除ける力があるのが歌の魔法の使い手であることで、その希少性や、利用価値をきちんと把握しているのであれば、積極的に王家が囲い込むことが分かるし、今までそうすることがほとんどだったのだから。
それを無理を言ってまだ公表してほしくないとお願いをしているのだ。すごく迷惑をかけていることはわかるのだが、ノアと話していた時、他国からも狙われる可能性があると聞き、それが攫われるのか殺されるのかは分からないが、平和に生きたい自分としては全力で回避したいと思った。なので自衛手段が無いうちは、なるべく周囲の人には内緒にしてほしいと話し、ノアが上手く陛下に伝えてくれたおかげで同意を得ることが出来た。ただし、この世界での成人、デビュタントの16歳までには公表することを約束している。遅くともデビュタント、心の準備、護衛面が解決したらいつでも公表を、ということだ。
第二王子の様子を今日見た限りでは、ノアを王太子にと考えており、他の反乱分子を早く取り除いておきたいと考えているのではないかと思う。まぁ幸いにもユエルは公爵家の者なので、現状だけでも強力な後ろ盾があるから、ということで歌の魔法の使い手の公表は焦ってはいないのだろう。
あの第二王子が国王なってしまっては、傀儡にされるのは目に見えている。これからの教育でどこまで修正されるかは分からないが、三つ子の魂百までと言われるのだから、国の平和のためには避けたいだろう。
それにしても、少し話した程度だが、王妃殿下もしっかりとした人に見えたのに、何故ラオシュは突然変異のようにあんな性格になってしまっているのか、不思議でしょうがない。
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