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とまあ、なんやかんやとあったが無事授業を受けることが出来た。結局魔術や剣術、馬術もノアと一緒に受けることになったので、1日中城に居ることになる。
朝9時に登城して、2時間妃教育、そこから1時間はノアと共に剣術か魔術、昼食を一緒に取って、午後から2時間またノアと剣術か魔術か馬術か。お茶の時間を過ごして最後にまた1時間は妃教育を受けて帰るというスケジュールになるそうだ。
この年齢の子どもが2時間集中して物事に取り組めることは少ないと思うのだが、どうしていたのだろうかと少し気になる。ユエルの場合は中身がそこらの子どもと同じではないのでね、うん。大丈夫だとは思う。たぶん。
そんなわけで授業を受け始めてもう2週間が経ったのだが……。
「おい、オレの話しを聞いているのか、ユエル!」
「聞いてない」
「………お前、正直すぎないか?」
「この年で正直じゃないって逆におかしいでしょ」
「ふっ本当に面白い奴だな」
何を思ったのかラオシュがユエルを見つける度に、無理矢理お茶の席を設けるようになったのだ。それは大抵午前の妃教育が終わってノアの下に行こうとしている時が多くて、まだ始めたばかりだからと少し余裕を持って授業を終えてくれるために捕まることになるのだ。講師の気遣いが裏目に出てしまっているのが何とも言えない気持ちになる。できれば自分の自慢話ばかりする退屈な話を聞くよりも、天気のいい庭をゆっくり散歩しながら鼻歌を歌うか、体力をつけるために王城内を走る、訳にはいかないのでやはり散歩するしかないのだろう。
「だからユエル、兄上じゃなくてオレの婚約者になれ!」
「………何が?」
「何が?って、オレが大事な話をしてるんだから、ちゃんと聞けよ!……だから、王妃になりたいならオレの婚約者になった方がいいって言ってるんだ。なんていったってオレが国王になるんだからな!」
「へーすごいね。それで、何で僕が殿下の婚約者にならないといけないの?」
「?何でって、オレが国王になるんだぞ?」
「うん。だから?」
「だからって……」
「だって僕、ノアが国王になるからとか、自分が王妃になりたいからって婚約した訳じゃないもん」
「………じゃあ何で兄上と婚約したんだよ」
心底わからないといった表情をするラオシュに、こちらも意味が分からない顔になる。
「うーん。まだ好きっていうことは分からないけど、ノアがノアだから、僕は婚約したんだよ」
「………もし、兄上よりオレと出会うのが早かったら?」
「殿下と婚約の話しが出てたら、絶対断ってたね」
「なぜだ!」
即答すると何故か必死の形相と言ってもよい表情で身を乗り出して聞いてくる。
「だって、話が合わない人と婚約、いずれは結婚って嫌だから…」
「は、話が合わない?」
「え?楽しいと思ってるって思ってたの?」
「な、何が楽しくなかったんだ?」
「えー。……怒らない?」
「………怒るならとっくに怒ってる」
「うーん、じゃあ言うけど……。殿下は自分の自慢話しかしないから、興味がない僕からしたらとてつもなくつまらない、かな」
ラオシュは口を開けばどんなブティックのどれだけお金がかかる服を沢山仕立ててもらっている、とか、どれだけ高名な人に教えてもらっている、とか、そんなことしか言わないのだ。これがノアだったらお互いがどんなものが好きなのか、以前話していた物を試してみたなど、興味のある会話を拡げていこうとしてくれるのでとても楽しい。ラオシュには普通に会話が出来る人が近くにいないのだろうか………。
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