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「………………。」
「はぁ。少しでも変わりたいと思うなら、多くを学んでください。自分に都合のいいことばかりを言われる環境をおかしいと思ってください。それは決して貴方を思って言っていることではありません。………殿下が変わらないのであれば、僕は今後貴方と話をすることはないでしょう。考えてください。考えても分からなければ親である陛下や王妃殿下に聞いてください。もちろんノアでも構いません。少しでも変わられることを願っています」
途中から、なぜ自分がこんなことを言っているのか分からなくなりながらも、言いたいことは全部言えたと思う。ノアと結婚するのであれば、ラオシュが義弟となるのだから、はいはいと受け流して良好な関係を作ることもできたはずなのだ。しかしきっとこのままでは碌な大人にならない。なぜこの世界の子どもは碌な大人にならなさそうな歪んだ子と、完璧すぎる子がいるんだろう。まぁ圧倒的に前者が多い気がするが………。もしかして、主人公とやらがその歪んだ性格を正していくのか、その歪みが個性として、魅力として考えられているのか、プレイしたことがない自分にはわからないので考えても仕方がない。
言いたいことだけ言って、ノアの下に行こうと生垣を曲がった直ぐで、ノアと遭遇して驚く。
「っ!」
「ふふっ、ごめんね。大丈夫?」
流石に先ほどの場所とそれ程離れていない場所でノアと話すのもどうかと思い、手を引いてその場を離れる。
「………何でいるの?と言うか、いつからいたの?」
「うん?ユエが遅いから、またラオシュに捕まってると思ってね、迎えに来たんだよ。そうしたらユエがラオシュに口説かれていたから、どう返事するのか気になってね。ユエに好きになってもらうのは時間がかかりそうだ」
「……結構前から聞いてたんじゃん」
そう話しながらも笑顔のノアを見て、早くあの場に来ていたのなら声をかけてほしかった。そうすればわざわざユエルがラオシュの歪みに対して説教のようなことをせずに済んだし、ノアの悪口も聞かずにすんだのに、とついつい唇を尖らせてしまう。
「ふふっ、うん。…嬉しかったよ、ユエ。ありがとう」
「………今度から早く助けてね」
そんな優しい顔と声で言われてしまっては、これ以上怒ることができないではないか。きっとそんなことも分かっていてやっているのだろうから、いい性格をしていると思う。
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