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結局あの日以降、ラオシュに引き留められることはなくなった。ちゃんと陛下たちに相談をしたのかは分からないが、ノアが何も言わないので大丈夫だろう。そんな中、妃教育も魔術も馬術も順調に進んでいる中、問題は剣術だった。 「うーん。ユエル様は長剣に向きませんねぇ………」 指導をしてくれている騎士(副隊長らしい)にそう言われ、自分でも薄々気が付いていたが改めて言われるとショックが大きい。 剣術といっても、初めは体力と筋力づくりから始め、型の勉強をしていったのだ。そしてそろそろ本格的にと、訓練用の模造刀を使って訓練をし始めたのだが………。 「ユエが使えそうなのは短刀かな?」 「そうですねぇ。武器という大きな括りで言うのであれば、あとは弓矢や魔拳銃、細剣はギリギリどうかといったところでしょうか」 「うぐっ。剣、使いたかった……」 普段から散歩、ランニング、腹筋、背筋はしてきていたので、全くついていけないということは無かったのだ。問題は腕力だったのだ。ただの摸造刀なのに持ち上げることが出来ない。同じような体格のノアは軽々と持っているにも関わらず、自分はぷるぷると震えながら地面から10cm程しか持ち上がらない。この差は何なのだと恨めしくノアを見てしまっても仕方がないと思う。 「これから筋力がついてくるとは思いますが、今がこの状態では、自由に長剣を扱うことは難しいかと……。あくまでも私の経験からくる推測ではありますが」 「ま、まぁユエは魔法の適性が高いみたいだから、無理に剣術とか習得しなくてもいいんじゃないかな?」 「………魔法が使えない状況になったら?……室内だったら絶対魔法より何かの武器を使ったほうがいいもん。だから!長剣は諦めるけど、他の武器でもいいから何か習いたい!」 ノアも父上と一緒で、ユエルが武術の類を習うことに対して大賛成というわでは無いことは何となく理解している。決して否定することも、初めから辞めておけと言うこともないのだが、事あるごとにしんどくはないか、怪我はしていないかと過保護気味に聞いてくるのだ。筋トレをしてどうやって怪我をするのかと少々呆れることもあるが、本音では習ってほしくないんだろう。それを言わないでいてくれるのであれば、多少の過保護は甘んじて受けようと思う。
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