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「お立場を考えますと近接武器の習得は確かに必要かもしれませんな。何か使ってみたい物はありますか?」
「うーーーーん。細剣、かな?」
ずっと、ザ・ファンタジーなゴツイ剣、大剣や長剣を考えていたので、少しでも似たものと考えるとやはり細剣しかないのだろう。一瞬、先程チラリと言葉に出ていた魔拳銃というものも気になったのだが、今はひとまず剣を習得したい。
「わかりました。後日細剣を扱っている隊員の予定の調整をいたします。ということで今日は、先程室内で近接武器を使用するというお話が出ましたので、それについての説明、注意点をお話しましょう」
本当は模擬刀を使用した訓練を始めようと思っていただろうに予定を変更させてしまって申し訳ない気持ちになるが、先ほど自分が適当に言った室内での戦いということにも興味を惹かれる。突然襲撃されたりする時に役立つはずで、それは同じ人間を相手に戦わないといけないものなのだろうから、決して穏やかな話ではないはずだ。しかし、王族のノアと婚約したということは、そういう覚悟も必要だということなのだろう。
「元々お二人に習得して頂こうと考えていたのは室内戦に適応した近衛隊の戦い方です。一般的に屋外で魔獣を相手にすることが多い騎士団とは少し型が異なります。当たり前の事だと思われるかもしれませんが、屋外には障害物などがないため、剣を振り下ろす、薙ぐ、攻撃を回避するといったことが可能です。しかし屋内ではそうはいきません。廊下ですと廊下の幅がありますし、どこかの室内であれば机などの調度品があり、剣を振ることが容易ではなくなります。ここまではわかりますか?」
「確かに型に違いがあるとは思っていましたが、理由を聞くと納得しますね。では、細剣は元々突くことが得意な武器だと思いますが、長剣でも同じように突く攻撃が多くなるのでしょうか?」
副隊長さんの話をなるほどとぽけっと聞いていただけのユエルに対し、ノアは武器の特徴を踏まえて質問しており、ここでもできる男の雰囲気を感じる。…次は何か質問を考えておこう。
「いい質問ですね。確かに突く攻撃が多くなり、細剣と似通った攻撃手段が多くなります。しかし近衛騎士が使用している武器は細剣ではありませんね。どうしてかわかりますか?」
確かに突く攻撃が多いのであれば、それに応じた武器を使用した方が良いのではないかと感じる。今回はノアも考えつかなかったようで、二人で顔を見合わせる。
「理由は、敵の攻撃を受けるためです。室内では避けることも容易ではないので、必然的に受ける必要があります。しかしそうすると細剣は文字通り細いのですぐに折れてしまう可能性が高いのです。攻撃を受けて剣が折れてしまうと、戦い続けられなくなり生存確率が下がってしまうので、ある程度攻撃を受けることのできる長剣を使用しているのです」
説明されて納得することばかりで、日本で平和に暮らしていた記憶があるからか、命のやり取りをする危険性を常に考えなければいけないのだと改めて感じる。
今はまだ実感がないからなのか、そんな世界で7年間育ってきたから違和感が少ないのか。きっと前者が正解なのだろう。何と言っても優月としての記憶が24年分もあるのだから、価値観や常識はどうしてもそちらに引っ張られる。
(いずれこんなことも考えなくなるくらい混ざるのかな。どちらかが消えるんじゃなくて、きれいに混ざったらいいな)
まだ続いている話しをぼんやりと聞きながらそんなことを考える。
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