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「何故ユエが今の時間にここに居るのかはまた後で聞かせてもらうとして、お互い自己紹介をしようか。こちらがレオン・フォン・ガルシア、騎士団長ガルシア伯爵の次男で、こちらが宰相であるロペス侯爵の長男カイル・フォン・ロペス」 赤髪に赤銅色の瞳を持つ少年がレオン、黒髪赤眼の少年をカイルと紹介してくれる。どちらもとっても美少年なのだが、隣にノアが立っているからかそこまでの衝撃はない。しかしどこかで見覚えがあるような、名前にも聞き覚えがあるような気がするが、ユエルの知識なのかもしれない。軽く会釈をしてくれたのでユエルも会釈仕返しながらそんなことを思う。 「そしてこちらが我が愛しの婚約者殿であるバハル公爵家三男、ユエル・フォン・バハルだよ」 ノアが徐々に近づいてきていると思ったら、そう紹介されながら自然と腰を抱かれる。その行動に少し驚きながらも、ノアはスキンシップが多いのでそんなものかとあまり気にしないことにする。 「はじめまして。年も変わらないと思うので気軽にユエルと呼んでください。よろしくお願いします」 一先ず挨拶は基本なので笑顔で話しかけておく。貴族は高位の者から話しかけなければならないというし、問題ないだろう。 「は、はじめまして!お、俺のこともレオンって呼んでくれ!です!」 何故かガチガチに緊張した様子で、薄っすらと顔を赤らめながら敬語とも言えない言葉遣いで挨拶をされる。 「ふふっ丁寧な言葉遣いが苦手ならそのままでもいいよ。僕もその方が楽でいいから」 このくらいの年ならこれが当たり前なんだろうと思うと何だか微笑ましく感じで笑ってしまった。 すると何故か返事をするわけでもなくぽ〜っとこちらを見てくるので首を傾げると、レオンを押しのけるようにしてカイルが近づき手を取られる。 「では遠慮なく!僕のこともカイルって呼んでね!いやぁ、殿下の婚約者がこんなにかわいいなんて、羨ましいなぁ。ほら、殿下って何を考えてるかよく分からないこともあるだろうし、嫌になったらすぐに僕に乗り換えてくれていいからね?よろしくユエル」 そうマシンガンの様に話している途中で、手はノアに引っ剥がされたのだが、話し終えるとノアを少しだけ離れたところに連れて行く。 ヒソッ 「殿下、前に顔がいい子は性格が悪いだろうから婚約しても形だけになるだろうって言ってましたよね?どーゆーこと?」 「………ユエは直接話して違うとわかったんだ」 これも子ども特有なのか、本人は聞こえてないと思っていてもこちらには筒抜けで、少しバツの悪そうな顔をして言い訳のように話すノアがおかしくてまたクスクスと笑ってしまう。
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