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ひとしきりそんなやり取りを終えたあと、ノアに改めてどうしてこんな時間にこの場所に居るのかと尋ねられた。元々話そうと思っていたことだし、侍女に書いてもらった書面もノアに預けておこうと思っていたので丁度いい。それに、偶然ではあるが全く親しくない人が2人もいる前で、この時間に話していたという証拠も出来るだろう。
「確かに、男性であるノアに完璧な淑女、女性の役割を求めるのは何か違う気がするね」
「でしょ?大体、女性の役割を求めるんだったら、初めから王妃となる者は女性しか認めないってすれば良いんだよ。それをしてないってことは、王妃って、女性の役割が絶対に必要って訳でもないだろうし、その代の王妃様の得意なこととかを伸ばしていったらいい、その代の王様を支えることが必要なんだと僕は思うんだよね。それを笑顔がなんだとか…僕が笑ってる顔ってそんなに下品?」
話していた内容を思い出し、つい拗ねたように口を尖らせてしまう。そんなに人を不快に思わせるような下品な笑顔なのだろうかと、今更ながら少し心配にもなってしまう。
「そんな訳ないだろう?ユエの笑顔は天使のように周りの人も笑顔にする程だよ。……うん、ユエの言っている通りだと私も思うよ。最低限王妃となる者が必要となる礼儀や知識はあると思うけど、男女差は出てくると思う」
「そうだよね!そもそも今も王宮に務める人が男性だけだとか、働くのは男性だっていう貴族社会があることのほうが問題だと思うんだよね。それなのに王妃には男性でも淑女を求めるってどんな理屈だよ」
そう、この世界は男性でも子どもを産むことが出来るのに、何故か女性は家を守るもの、男性は働くものという認識が強い。なんなら女性が働くことは体裁が悪いと言われるのに、男性であれば子どもが出来た後でも働いていたりもする。なのに女性は行儀見習いということなんだろうが、侍女やメイドくらいしか働けないとはどういうことなのか疑問に思っていた。日本でもまだまだ男が働く者という認識は強かったが、共働きがかなり増えていたのでこの世界の常識に違和感がある。
「なるほど……。女性が働いても良いじゃないかなんて、今まで考えたこともなかったな。でも確かにそうだね。子供は誰でも産むことが出来るんだもの、女性が働いてもいいよね。父上に提言して、私達の代の政策にしようか」
「え、そんなに軽く決めて良いものなの?」
「いいんじゃない?必要な事だと思うし。ねぇカイル、レオン?」
「そうだね、僕も国が大きくなるには必要だと思うよ。今まで何で気が付かなかったんだろうね」
「お、俺も!俺もいいと思う!母様が自分も王妃様の騎士になりたかったってずっと言ってたし!」
そこで今まで空気だったカイルとレオンに話しを振る。いきなりだったし、ずっとこちらが話すだけだったので聞いていなかったのでは?と思うがちゃんと聞いていたようだ。さすが将来の側近。
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