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目を覚ましたら見たことのない…ってやってみたかったけど、本当に見たことない場所だったらただただ混乱するだけだと思う。何だか後頭部はズキズキと痛むし全然見たことのない場所だしで、どうしようかと思案する。
とりあえず布団らしきものに寝かされているようなので起き上がってみると、天井だと思っていた物はベッドの天蓋だったようだ。しかし…
(えー趣味悪くない?すっげぇ派手なんだけど)
天蓋、そのカーテンから薄っすらと覗き見える程度だが部屋の壁や調度品が白地に金、金、金、たまに青。色の組み合わせ的にはそれ程おかしくないはずなのに、金の占める割合が多すぎて悪趣味というほかない。
恐る恐るカーテンを除け改めて部屋を見回そうとした時、自分の手が視界に入り驚く。
(っ!手、ちっちゃくねぇ⁈え、どういうことだ?か、鏡、鏡)
慌ててカーテンを除けて部屋を見回し、鏡を発見すると急いでその前に移動する。ベッドから降りるときも自分の体が小さいと感じることに戸惑ったがそれどころではない。
鏡をそっと覗き込んで見るとそこには、絶世の美少年が居た。髪は青味がかった銀色で長髪。長いまつ毛に縁取られたぱっちりとした二重の瞳は、澄んだ海の色でコバルトブルーというのだろうか。しかしその中にもわずかに緑がかって見えることもあるため、ターコイズブルーなのか?いや、それどころじゃない。どういうことだと思い始めると急に頭に激痛が走りうずくまってしまう。
「いっ!~~~~っ」
その時走馬灯のように一気に頭の中に情報が流れ込んできた。『僕』の名前はユエル・フォン・バハル。バハル公爵家の三男で、母親は他界している。父親と上の兄二人とは疎遠で家族仲は良好とはいいがたい。そして自分はかなり我が儘に過ごしてきてしまったことを唐突に理解する。そして、先ほどまでの『俺』は、前世のものなのだと。
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