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故郷の地球では、問題にならない程度なのだろう。しかしこの星の木々と比べたら、桜の繁殖力は驚異的なレベルだった。
「おお、凄い! 満開の桜だ!」
「これほど桜が増えるとは……」
「見てください! こっちは明らかに違う木なのに、桜そっくりの花を咲かせていますよ!」
再訪した地球人たちが大喜びしたように、桜そのものも爆発的に増えたし、僕たちの種族との交配もどんどん進んでいく。
いつのまにか、僕たちの種族本来の樹木は、僕だけになってしまった。僕と会話できる植物生命体は、もう周りに一本も生えていないのだ!
この体が朽ち果てた後に乗り移るべき木々も、意思を持てない新種ばかり。つまり、いずれ僕の意識も消滅するしかないわけで……。
最初は新しい仲間として歓迎した桜だったが、その桜のせいで、僕たちの種族は絶滅を迎えることになる。
だから僕は、いつのまにか桜を嫌いになってしまった。本当は持ち込んだ地球人の方を恨むべきだけど、滅多に来ない地球人よりも、常に周りにいる桜の方に強い嫌悪感を抱く。それは仕方のない話だよね?
(「桜、それは僕たちの新しい仲間」完)
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